しっとりとしたパン生地と
やさしい甘さのクリームが絶妙に調和した「クリームパン」。
日本の菓子パンを代表する存在であり、
子どもから大人まで幅広い世代に愛され続けています。
コンビニやベーカリーに並ぶ姿は日常の風景になっていますが、
その中には
「野球のグローブのような形」をしたものがあることをご存知でしょうか。
「なぜクリームパンはあの形なのか?」と
不思議に感じた方も少なくないでしょう。
本記事では、クリームパンの形の由来や誕生の歴史に迫るとともに、
種類や進化系商品についても詳しく紹介します。
読んだ後には、
今まで以上にクリームパンを味わい深く感じられるはずです。
クリームパンとは?基本の形状とは?
まず、
クリームパンとはどのようなパンなのかを整理しておきましょう。
クリームパンは、
ふんわりとした生地に
カスタードクリームなどの甘いフィリングを詰め込んだ菓子パンです。
あんぱんやジャムパンと並んで、
日本のパン文化を代表する存在のひとつとされています。
形状は楕円形や丸型が一般的ですが、
上部に数本の切り込みが入り、
グローブのように見えるタイプもあります。
切れ込みの入ったパンは見た目のインパクトが強く、
「クリームパン=グローブ型」というイメージを持つ人も少なくありません。
形だけでなく、
食べやすさやクリームの入り方にも工夫が凝らされており、
その独特な姿が日本人の記憶に深く刻まれています。
グローブ型の理由とは?
では、なぜクリームパンはグローブの形になったのでしょうか。
実はこの形にはいくつかの背景や説があります。
半円形からの変化
誕生当初のクリームパンは、
柏餅のような半円型が主流だったとされています。
現代のようにグローブ型が定着したのは後のことであり、
最初から特徴的な形だったわけではありません。
空気抜きの工夫
もっとも有力とされる説は
「発酵による空気抜きのための切り込み」です。
パンは発酵時に膨らみますが、
中にクリームがあると空洞ができやすく、
クリームが少なく見えてしまう問題がありました。
そこで、パン職人が上部に切れ込みを入れることで空気を逃がし、
仕上がりを安定させたといわれています。
その結果、
自然とグローブのような見た目になったのです。
さらに、切れ込みを入れることで中のクリームが見えやすくなり、
消費者に「中にはたっぷりのクリームが入っていますよ」
とアピールできる効果もありました。
クリームパンの誕生秘話
クリームパンがいつどこで生まれたのかについても、
いくつかの説があります。
シュークリームがヒントに
明治末期の1904年頃、
新宿のあるパン屋「中村屋」で誕生したという説が知られています。
創業者の相馬愛蔵氏が西洋のシュークリームに感銘を受け、
「あんぱんのようにパンの中にクリームを詰められないか」と
考えたのが始まりとされています。
カスタードクリームをパンに
また、大正時代にパン業界で活躍した
山崎豊治氏が考案したという説も有力です。
彼はカスタードクリームをパンに入れる発想を実現し、
日本独自の菓子パン文化を広めるきっかけを作りました。
こうして誕生したクリームパンは瞬く間に人気を集め、
100年以上の歴史を持つ定番パンとして定着していったのです。
現代に広がるクリームパンの多様性
クリームパンは誕生から長い年月を経て、
今も進化を続けています。
- 生クリームタイプ:カスタードではなく生クリームを使った、
デザート感の強いパン。
濃厚でなめらかな味わいが特徴です。 - 抹茶クリームパン:和風のテイストを加えた一品。
抹茶の香りとほろ苦さが、パンと絶妙にマッチします。 - デニッシュ生地のクリームパン:層が重なったデニッシュ生地で、
サクサクと軽い食感が魅力。 - クリームドーナツ:ドーナツ生地にクリームを詰めたもの。
揚げパンならではの香ばしさが楽しめます。 - マリトッツォ:イタリア発祥で、近年日本でも大人気。
丸いパンにたっぷりの生クリームを挟んだ贅沢なスイーツです。
このように、クリームパンは一つの形にとどまらず、
時代や嗜好に合わせて多彩なバリエーションが誕生しています。
広島・呉のメロンパンはクリームパン?
広島県呉市には「メロンパン」と呼ばれる、
全国的にも珍しいご当地パンがあります。
名前は「メロンパン」ですが、
一般的にイメージされる
格子模様のクッキー生地を持つものとは大きく異なり、
直径15センチほどもあるビッグサイズの楕円形が特徴です。
中にはカスタード風味のクリームがたっぷりと詰まっており、
ふんわりとしたパン生地と濃厚な甘みが絶妙にマッチします。
その見た目と食べごたえから、
初めて食べる人は驚くことも多いでしょう。
クリームパンの一種とも言える存在でありながら、
独自の進化を遂げた呉メロンパンは、
日本のパン文化の多様性を示す貴重な一例といえるでしょう。
まとめ
クリームパンの特徴的な「グローブ型」には、
単なる見た目の遊び心ではなく、
発酵や空洞化を防ぐための工夫が隠されていました。
さらに、
クリームをしっかりと感じてもらうための職人の思いも込められています。
誕生から100年以上が経った今も、
クリームパンは進化を続け、
多彩なバリエーションが登場しています。
定番のカスタードだけでなく、生クリームや抹茶、
デニッシュタイプなど、選ぶ楽しみも広がっています。
何気なく食べているクリームパンですが、
その背景や由来を知ると、
より一層美味しく感じられるはずです。
次に手に取るときは、
ぜひその形や歴史にも思いを馳せながら味わってみてください。
旅行先で地元のパン屋を訪れ、
その土地ならではのクリームパンを味わうのもおすすめです。
お気に入りのクリームパンを探し、
自分だけの一番を見つける楽しみ方もおすすめです。