サクサクとした食感と芳醇なバターの香りで
多くの人に愛されるクロワッサン。
朝食の定番としてだけでなく、
カフェメニューやスイーツとしても人気の高いパンです。
しかし、その誕生の背景や名前の由来については、
あまり知られていないのではないでしょうか。
実はクロワッサンはフランス生まれと思われがちですが、
そのルーツをたどると意外な国に行き着きます。
本記事では、クロワッサンの知られざる起源や名称の意味、
そこから派生したパンのバリエーション、
美味しく味わうためのアレンジ方法までを詳しく紹介します。
パン好きの方はもちろん、
食文化に興味のある方もぜひ最後までご覧ください。
クロワッサンとはどんなパン?
クロワッサンとは、
バターを織り込んだデニッシュ生地を幾重にも重ね、
層を形成して焼き上げた、
見た目にも美しいパンの一種です。
外側はパリッと香ばしく、
中は空気を含んだようにふんわりと軽い食感が特徴です。
形状は三日月のように湾曲したものや、
まっすぐな棒状のものがあり、
いずれもベーカリーでは定番商品として並んでいます。
そのまま食べても十分美味しく、
またジャムやハム、チーズなどを挟んでサンドイッチにしても相性抜群です。
実はフランス発祥ではない?クロワッサンの起源
オーストリアから始まったクロワッサンの物語
多くの人がフランスの伝統的なパンとして認識しているクロワッサンですが、
実はその起源はオーストリアのウィーンにあります。
時は17世紀。1683年、オスマン帝国が
オーストリアの首都ウィーンを包囲した「第二次ウィーン包囲戦」が発生。
この戦いで、敵の掘削音に気づいたパン職人たちが防衛軍に通報し、
都市の危機を救ったという逸話があります。
この勝利を記念し、
オスマン帝国の旗に描かれた三日月を模したパン
「キプフェル(kipferl)」が作られたのです。
このキプフェルこそが、
クロワッサンの原型とされています。
当時のキプフェルは、
現在のようにバターたっぷりのサクサク生地ではなく、
もっと素朴でシンプルなロールパンに近いものでした。
フランスでの進化と定着
キプフェルがフランスに伝わり、
洗練されたクロワッサンへと進化していくきっかけとなったのは、
ウィーン出身の実業家アウグスト・ツァングがパリで開いた
「ブーランジェリー・ウィエノワーズ」と呼ばれるパン店の存在です。
この店で販売されていたキプフェルに影響を受けたフランスの職人たちが、
独自の工夫を重ね、
現在のようなバターの風味豊かな層状の生地を生み出しました。
フランス語で「三日月」を意味する
「croissant(クロワッサン)」という名称も、
この独特な形にちなんで付けられたのです。
クロワッサンから生まれた多彩なパン
クロワッサン生地をベースにした、
バラエティ豊かな派生パンも世界中で親しまれています。
ここでは、
代表的なものをご紹介します。
- パン・オ・ショコラ
四角く成形されたクロワッサン生地の中に、
2本のチョコレートスティックを包み込んだパン。外はサクサク、
中からは濃厚なチョコレートがとろけ出します。フランスの朝食やカフェメニューでも定番のひとつです。 - パン・オ・レザン
カスタードクリームとレーズンをクロワッサン生地に巻き込み、
渦巻き状に焼き上げた一品。見た目がかたつむりに似ていることから「エスカルゴ」とも呼ばれ、
スイーツとして人気があります。 - クロワッサンダマンド
焼き上がったクロワッサンにアーモンドクリームを重ね、
再度オーブンで焼いた贅沢な一品。表面にスライスアーモンドを散らし、
粉糖を振りかけることで、
よりスイーツ感が引き立ちます。余ったクロワッサンの再利用から生まれたと言われる、
サステナブルな美味しさです。 - クルンジ
韓国で誕生したクルンジは、
クロワッサン生地を平らに伸ばして焼き、
パリパリとした煎餅のような食感を楽しめる新感覚スイーツ。「ヌルンジ(おこげ)」をイメージした名前が付けられており、
表面のキャラメリゼと香ばしい風味がクセになります。 - パンスイス
スイス風ブリオッシュ「ブリオッシュスイス」をベースに、
クロワッサン生地でアレンジしたのが「パンスイス」。長方形の生地にカスタードクリームとチョコチップを包んで焼いたもので、
断面に美しい層が見えるのが特徴です。カスタードのなめらかさとチョコの甘み、
そしてバターの香りが絶妙にマッチしています。
クロワッサンをもっと美味しく楽しむアイデア
そのままでも美味しいクロワッサンですが、
ちょっとした工夫でさらに楽しみが広がります。
・ジャムやハチミツ、バターを添えて朝食に
・フルーツやホイップクリームを挟んでデザート風に
・ハムやチーズ、野菜を挟んでサンドイッチに
・フレンチトースト風にして焼き直し、スイーツとして再構築
・濃い目のコーヒーや紅茶、カフェオレとの相性も抜群
冷めてしまった場合は、
トースターで軽く温めると焼きたてのようなサクサク感が復活します。
まとめ
クロワッサンは見た目も味わいもフランスらしいパンですが、
その誕生のルーツは17世紀のオーストリアにありました。
「第二次ウィーン包囲戦」という歴史的背景と人々の創意工夫を経て、
フランスで洗練されたクロワッサンが誕生したのです。
今では世界中で親しまれ、
多彩なアレンジや派生商品が生まれているクロワッサン。
その美味しさの裏側にあるストーリーを知ることで、
いつものパンがもっと特別に感じられるはずです。
次にクロワッサンを味わうときは、
ぜひその歴史に思いを馳せながら、
ひと口ごとに楽しんでみてはいかがでしょうか。