夏になると話題にのぼる「土用の丑の日」。
スーパーや飲食店ではうなぎが並び、
家族で食卓を囲む人も多いでしょう。
しかし、
そもそもなぜこの日にうなぎを食べるようになったのかをご存じですか?
「土用」や「丑の日」という言葉には
古くからの暦の知識や日本人の生活習慣が深く関係しています。
また、うなぎが選ばれた背景には健康や縁起にまつわる理由もあり、
単なる食習慣以上の意味が隠されています。
本記事では、
土用の丑の日の由来からうなぎを食べる風習の誕生までをわかりやすく解説し、さらにうなぎ以外の関連食材や季節ごとの食養生の知恵もご紹介します。
土用の丑の日とは?「土用」と「丑の日」の意味
「土用」とは、
立春・立夏・立秋・立冬といった季節の節目の前に訪れる約18日間の期間を指します。
つまり、
四季それぞれに存在し、一年に4回訪れるものです。
古来より、この時期は気候の変化によって体調を崩しやすいため、
生活のリズムを整えるための知恵が必要とされてきました。
一方「丑の日」とは、
日にちを十二支で数える中で「丑」に当たる日を意味します。
十二支は干支として年を表すだけでなく、
日付や時刻、方角を表すためにも使われており、
約12日ごとに丑の日が巡ってきます。
したがって「土用の丑の日」とは、
土用の期間に訪れる丑の日を指すのです。
土用の丑の日は年に何度もある
多くの人は「土用の丑の日=夏」と考えがちですが、
実は土用自体が年に4回あるため、丑の日も複数存在します。
とくに夏の土用に注目が集まるのは、
暑さで体力が落ちやすい時期にスタミナ食である
うなぎを食べる習慣が広まったためです。
一の丑・二の丑
土用は約18日間あるため、
丑の日が2回巡る年もあります。
この場合、最初を「一の丑」、
2回目を「二の丑」と呼びます。
たとえば
2025年の土用の丑の日は、
1月20日、2月1日、4月26日、7月19日、7月31日、10月23日、11月4日。
夏土用は7月19日が一の丑、
7月31日が二の丑にあたり、
どちらの日にも「土用の丑の日」としてうなぎを食べる風習が行われます。
2026年の土用の丑の日は、
1月27日、4月21日、5月3日、7月26日、10月30日。
2027年の土用の丑の日は、
1月22日、2月3日、4月28日、7月21日、8月2日、10月25日、11月6日。
夏土用は7月21日が一の丑、
8月2日が二の丑にあたります。
なぜ土用の丑の日にうなぎを食べる?
日本人とうなぎの関わりは古く、
縄文時代の遺跡からもうなぎの骨が見つかっています。
奈良時代には『万葉集』に「夏痩せにはうなぎが良い」と歌われ、
夏バテ防止の食材として親しまれていました。
江戸時代に広まった風習
土用の丑の日にうなぎを食べる習慣が定着したのは江戸時代。
夏場は脂が落ちて旬を外れたうなぎが売れず困っていたうなぎ屋が、
蘭学者・平賀源内に相談しました。
源内は「丑の日に“う”の付く食べ物を食べると縁起がいい」という
言い伝えを利用し、「本日丑の日、うなぎの日」と張り紙を出すよう提案。
これが話題を呼び、
大繁盛したことがきっかけで庶民に広まったとされています。
「う」の付く食べ物と縁起
丑の日には「う」の付く食べ物を食べると
無病息災につながると信じられてきました。
うなぎのほか、
うどん、梅干し、瓜(きゅうり・スイカ)、牛肉、馬肉などもその対象です。
いずれも夏に体を冷やしたり、
スタミナをつけたりする食材として理にかなっていました。
季節ごとの土用と食養生
土用は四季それぞれに存在するため、
各季節に合った食材をとる「食養生」の考え方も生まれました。
・春土用(立夏前):
「い」の付く食材(いわし、いんげんなど)や白い食べ物(大根、かぶなど)
・夏土用(立秋前):
「う」の付く食材(うなぎ、うどんなど)や黒い食べ物(黒豆、ごぼうなど)
・秋土用(立冬前):
「た」の付く食材(鯛、たまねぎなど)や青魚(さんま、さばなど)
・冬土用(立春前):
「ひ」の付く食材(ひじき、干物など)や赤い食材(りんご、マグロなど)
これは単なる縁起担ぎではなく、
季節ごとの食材や習慣を取り入れて、体調を整える先人の知恵なのです。
まとめ
土用の丑の日は、
暦や生活の知恵と深く結びついた日本独自の習慣です。
「土用」は季節の変わり目を示し、
「丑の日」は十二支による日付の一つ。
その組み合わせが「土用の丑の日」となります。
江戸時代、平賀源内の発案をきっかけにうなぎを食べる風習が広まり、
今では夏の風物詩として定着しました。
また「う」の付く食材を食べる習慣や、
各季節に応じた食養生の考え方も、
先人が培った暮らしの知恵として現代に伝わっています。
単なるイベントとして楽しむだけでなく、
背景にある意味を知ることで、
食文化や季節の移ろいをより深く味わえるのではないでしょうか。