スーパーや精肉店で牛肉を選ぶ際、
「和牛」と「国産牛」の表示がされているのを見たことがある方も多いでしょう。
どちらも日本に関係する牛肉のように見えますが、実はこの2つには明確な違いが存在します。
この記事では、和牛と国産牛の違いをはじめ、それぞれの種類や特徴、「ブランド牛」とは何か、
そして多くの人が気になる「A5ランク」の評価基準についても詳しくご紹介していきます。
日頃の食卓で選ぶ牛肉の質を見極めるために、
ぜひ知っておきたい知識をまとめました。
日本で流通する牛肉の主な種類
日本の店頭に並ぶ牛肉は、
大きく以下の3つに分類されます。
1.和牛
「和牛」は品種によって分類される牛肉で、日本固有の血統を持つ4つの品種と、
その交配種のみがこの名前を使うことができます。
以下の4品種が該当します。
①黒毛和種(全国の和牛の90%以上)
②褐毛和種(主に熊本や高知)
③日本短角種(東北や北海道で飼育)
④無角和種(山口県原産)
和牛という表示は、牛が日本で生まれ育ったかどうかではなく、
「品種」に基づいていることが特徴です。
2.国産牛
一方で「国産牛」は、牛の品種を問わず、
日本国内で飼育された期間が最も長い牛に与えられる表記です。
たとえば外国で生まれた牛であっても、
日本での飼育期間が他国より長ければ「国産牛」となります。
和牛以外のホルスタイン種(乳牛)やその交雑種も、
日本国内で飼育されていれば国産牛に分類されます。
3.輸入牛
輸入牛は、飼育や加工を海外で行ったうえで日本に輸入された牛肉です。
アメリカやオーストラリアなどが主な供給国となっており、
比較的リーズナブルな価格で購入できます。
和牛4品種の特徴と代表的なブランド
1.黒毛和種
国内で最も多く飼育されており、霜降りの美しさと肉のやわらかさで人気。
高級ブランド牛のほとんどはこの品種にあたります。
代表例:松阪牛、神戸牛、米沢牛、近江牛、飛騨牛
2.褐毛和種
赤身が多く脂が控えめで、あっさりとした味わいが特徴。
熊本や高知で主に飼育されています。
代表例:くまもとあか牛、土佐あかうし、すだち牛、いけだ牛
3.日本短角種
全国で約8,000頭しかいないとても希少な品種です。
霜降りが少なく赤身が豊富で、肉本来の旨味が感じられる牛肉。
健康志向の方に人気があります。
代表例:いわて短角牛、とわだ短角牛、八甲田牛、えりも短角牛
4.無角和種
名前の通り「角」がなく、全国でたった200頭ほどしかいないとても希少な品種です。
山口県阿武町で在来和牛とアバディーン・アンガス種を掛け合わせた品種で、
霜降りが少ない赤身肉で、独特の風味を持ちます。
代表例:無角和牛
ブランド牛とは?
「ブランド牛」とは、
特定の地域や団体が定めた基準を満たした和牛に与えられる呼称です。
たとえば、以下のような牛肉が該当します。
・神戸牛(こうべぎゅう)【兵庫県】
兵庫県産の但馬牛を素牛とし、県内で生まれ・育ち・出荷されたもの。
未経産の雌牛や去勢牛で、
枝肉の等級や脂肪交雑(BMS)など厳格な基準を満たす必要があります。
美しい霜降りと柔らかい食感が特徴。
・松阪牛(まつさかうし)【三重県】
旧松阪地域で肥育される黒毛和種の未経産雌牛のみが対象。
「松阪牛個体識別システム」に登録され、
生後12ヶ月齢以内に指定地域に導入された牛に限定されます。
脂の質が非常に良く、口溶けの良さに定評があります。
・米沢牛(よねざわぎゅう)【山形県】
山形県米沢市を中心とした置賜地域で飼育された黒毛和種。
一定の期間以上飼育され、
厳格な飼育・品質管理を経て認定されたもののみが「米沢牛」を名乗ることができます。
霜降りと赤身のバランスに優れ、深い旨味が特徴です。
・近江牛(おうみぎゅう)【滋賀県】
日本最古のブランド牛とも言われる近江牛は、滋賀県内で長期肥育された黒毛和種。
枝肉等級がA4またはB4以上のものなど、
明確な格付け基準をクリアした牛が「認証 近江牛」として流通します。
脂の甘さとまろやかな味わいが魅力。
和牛を選ぶときに気を付けたいこと
お店では「黒毛牛」、「黒牛」などの表示があることもありますが、
「黒毛和種」または「黒毛和牛」と記載されていなければ、和牛ではない可能性があります。
また、オーストラリアなどで飼育された和牛品種もあるため、
和牛=国内産とは限りません。ラベルの原産国もよく確認しましょう。
さらに、パッケージには10桁の「個体識別番号」が記載されており、
これを「牛の個体識別情報検索サービス」に入力すれば、牛の生産地や飼育履歴を確認できます。
「A5ランク」って何のこと?
「A5ランク」と聞くと、
多くの人が「最高級で美味しい牛肉」という印象を持つかもしれませんが、
実際には味そのものを示すものではありません。
A5の意味
「A」は歩留まり等級を示し、1頭の牛からどれだけ肉が取れるかを示す評価です。
Aが最も高く、B・Cと続きます。
「5」は肉質等級を示し、以下の4項目で評価されます。
1.脂肪交雑(霜降りの度合い)
2.肉の色と光沢
3.肉の締まり・きめの細かさ
4.肉の柔らかさ
このうち、最も低い項目の評価が全体の等級になります。
たとえ他がすべて5でも、1つでも3であれば等級は「3」となるのです。
A5ランクは美味しさの保証ではない
評価基準には「味」や「風味」の項目は含まれていません。
ただし、霜降りや脂の質などは食味に大きく関係するため、
美味しさと相関する部分もあります。
また、あっさりした赤身が好まれる傾向もあり、
褐毛和種や日本短角種といった赤身主体の牛肉も近年評価が高まっています。
まとめ:表示ラベルを理解して納得のいく選択を
牛肉を選ぶ際に、
「和牛」「国産牛」「ブランド牛」「A5ランク」などの言葉に戸惑うことはありませんか?
それぞれの定義や評価基準を知っておくことで、自分に合った牛肉を選ぶ助けになります。
霜降り重視でとろけるような肉質を求めるなら黒毛和種のA5ランク。
赤身が好きなら褐毛和種、日本短角種、無角和種。
用途や好みに応じて賢く選ぶことが、おいしい食体験につながります。
次にお肉を購入する際には、
ぜひパッケージの表示や産地情報をじっくり見てみてください。
「知って選ぶ」ことで、食卓の満足度もぐっと高まるはずです。